意外と気付かれていない?マーケティングに対する誤解
Webマーケティング、モバイルマーケティングなど、マーケティングといえば、様々なチャネルを使って、消費者に対して物を売るための手法と捉えられることが多いかと思う。しかし、本来的なマーケティングとは、営業を行わなくても製品・サービスが売れる状態を作ることを意味している。多くの企業では、この部分が理解されていないため、マーケティング部門は組織的にも役割的にも、広報・宣伝活動や、営業部門のサポートを行う部門と位置づけられていることが多く、マーケティング活動というよりは、プロモーション活動を行う部門という側面が強くなっている。
営業を行なわずに製品・サービスを売るためには、消費者が望む製品やサービスを開発し、消費者が望む場所・手段で製品・サービスを提供し、企業と消費者双方が妥当と判断した価格で製品を販売する必要がある。プロモーションはそのような製造・供給方法を消費者に知らせるためのものであり、マーケティング活動の一側面でしかない。
本来的なマーケティング活動は以下のようなステップで実施される。
1. 競合情報と自社情報からマーケットセグメントを行う。
2. 消費者情報からターゲットセグメントを行う。
3. 1、2、のセグメントから自社及び競合他社のポジショニングを行う。
4. 3を元にマーケティングの4P(Product/Price/Place/Promotion)を設計する。
マーケティングの4Pはジェローム・マッカーシー(Jerome McCarthy)が1960年に提唱したフレームワークで、現在ではあくまでも企業側から見たマーケティング・ミックスの手法とされている。
消費者視点、マーケティングの4Cとは
これに対し1993年にロバート・ローターボーン(Robert F.Lauterborn)が提唱したのが、マーケティングの4Cである。こちらは、企業側の視点が強いマーケティングの4Pに対して、消費者視点から捉え直したマーケティングのフレームである。
1. Product ⇒ Customer solution (またはCustomer Value)
2. Price ⇒ Customer Cost
3. Place ⇒ Convenience
4. Promotion ⇒ Communication
消費者が情報的に主導権を握っている現在では、4Pで考えるより4Cによるアプローチのほうがより現実的な回答を引き出し安いと考えられる。特にPromotionがCommunicationに置き換えられている意味が大きい。もはや無くてはならない社会インフラとなり、消費生活に多大な影響を与えるようになったインターネットは、Promotion向きのチャネルではなく、Communication向きのチャネルであり、そのインタラクティブ性が、良い意味でも悪い意味でも情報の流動性を高め、企業にとって大きな影響を与えているからである。
マーケティングの4Cを元に考えると、企業は消費者を知る・消費者と対話することが如何に重要かということが分かるかと思う。
パーパース・ドリブン・マーケティングとは
2010年10月、全米広告主協会(ANA)の2010年大会で話題になったのは「パーパス・ドリブン・マーケティング」である。これは「目的主導型マーケティング」と訳すことができ、人類的・社会的な目的に沿って、企業と消費者が協力して活動を行い、その関係性の中から長期的な、受け取るべき対価としての企業利益を得るというものだ。「パーパス・ドリブン」という言葉自体は牧師が考えたもので、宗教的な意味合いも含んでいるが、マーケティングの進む方向としては間違いではないと思う。
「パーパス・ドリブン・マーケティング」は、マーケティングの4Cを推し進めた考えかたで、マーケティングを企業と消費者の関係のみに限定せず、より広い視点、全人類的目的から始動するというものである。企業価値が利益だけでは計れなくなり、ある意味「ごまかし」が効かなくなった現代においては意味のある活動であると考えられる。ただし、このマーケティングを実践しようとすると、企業自体が全人類的な目的に対しての課題解決能力と遂行能力とを持ち、そこに企業の存在意義を持つことが必要になり、企業文化も含めて大きな変革が求められることになることは必至であろう。
活動の透明性で信頼を得る
ウィキリークスの件で示された通り、国であれ企業であれ、情報を自らの手元だけに保持するのが難しい時代になってきた。反面、情報の公開は消費者が望んでいることでもある。これからのマーケティングは「活動プロセスの透明性」が鍵と言えるだろう。その鍵は、企業活動全体についても、同様に使えるものなのかもしれない。
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